おいたん1500HITのリクに答えているようないないようなブツ

さっきから、視線が冷たい。
……うん、わかってる。
いや、自分が馬鹿なのはよくわかってる。
なんとなく並んで動きたいからって、ペコペコ置いてきてるあたり、本当に馬鹿だ。
相手に合わせる、って。こんな所で合わせても意味無いって。
でも、斧よりも鈍器の方がまだましじゃないか、と自分に言い聞かせている。



ペアで狩りに行くならプリーストの方が絶対に良いし、俺が一緒に行く利点とか全然思い浮かばなかったけど。
今度一緒にグラストヘイム室内行きませんか? と誘ったら、思いもかけず承諾してもらえた。
転生二次職ならソロでも行けるかも、と思って。
OKしてもらえるなんて考えてもいなかったから、しばらく呆然としていたと思う。
我に返ってから慌てて狩場について調べ始めた。
何しろ室内なんて自分では行った事が無い……。
幸い通いつめている先輩がギルドにいたので、とっ捕まえて話を聞くだけでだいたいわかったけど。
属性を仕込んだ武器でなければ攻撃が無効になる敵がいるから、ギルドの先輩を拝み倒して星入りの属性ソードメイスを借りた。
これで気兼ねなくオーバートラストを使ってもらえる……。
誘った相手は、ホワイトスミス。
そして俺は、ただの騎士、だ。
何か、こう……。色々と間違ってるとか、気を使うのはそこじゃないとか、自分でも突っ込みたいところは山ほどあるけども。
結果としては弱体化して足引っ張ってる分、逆にいない方が良いんじゃないかって感じだけど。
狩りを切り上げようとか、帰れとか言われないから、まあ、良い……、か……な?



ギルドのプリースト、スナイパーと俺の三人で時計塔地上四階に行く途中、三階の通路の脇にその人は座っていた。
煙草を燻らせながら、ぼんやりと。
知り合いだったらしいスナイパーが声をかけると、かったるそうに顔を上げた。
ホワイトスミスと言うだけで俺よりもずっと格上だけど、歳もずいぶん上のように見える。
あまり手入れもしていなさそうな銀髪がゆれて、何か邪魔されたとでも言うような不機嫌そうな深い紺碧の瞳がのぞく。
俺の所属ギルドにはスナイパーと殴りハイプリーストがいる。
この二人しか親しくしてる転生二次職がいないので、思わずじっくり見てしまった。
たぶん、今まではブラックスミスと区別できていなかったと思う。
似ているようで全然違うと、初めて気がついた。
むしろ共通点はジーンズってくらいしか無いかもしれない。
この服装でだらけた感じに座ってるのが、なんだか無性に様になっていた。
ソロみたいだから誘って良いか? と、スナイパーがパーティー機能で俺たちに聞く。
俺には拒否する理由なんか無い。
四人までなら支援はまわせる、と言ったプリーストの返事で決定した。
代表して誘うスナイパーの言葉に、彼は散漫な動作で俺たちを一瞥して。
そして一言だけ。
「……だりぃ」
スナイパーと会話していた中でも、おそらく一番はっきり聞き取れたのがこの言葉だった。
興味を無くしたように俺たちから視線が離れていく。
その刹那に、目が合った気がした。
細く流れていた煙草の煙越しに、青い目に紫色の光がさしたように見えて。
自分でもよくわからない。
でもその瞬間に、何かに囚われたと、そう感じた。



ギルドにはブラックスミスもアルケミストもいる。
でも、ホワイトスミスの事はよくわからない。
名前も知らない、ギルドも知らない。
時計塔の三階でスナイパーと交わしていた会話は短くて、彼が発した言葉はほんのわずかだ。
あの場所でソロができるホワイトスミスに興味がある、みたいな感じでスナイパーに聞いてみたが。
詳しくは知らない、という返事だった。
スナイパーの友人がいるギルドに一時期所属していた事。
その友人と狩りに行った時はよく清算をしてもらっていた事。
一度パーティー狩りで一緒した時は強かった、等。
その程度。
その頃から基本そっけなくて無愛想だったらしい。
戦闘の時には恐ろしく的確に動くから、さすがに転生してここまで来ただけはあるなぁ、と。スナイパーは言った。
そのギルドはすでに抜けてしまっていて、先日は本当に久しぶりに会ったのだという。
連絡の取り様が無い、接点も無い、探す術も無い。
スナイパーに聞いた名前は通称だったからか、それとも全遮断でもしているのか、耳打ちも通らなかった。
時計塔を狩場にしているならそこで会えないかと、三日ばかり入り口付近でぼーっとしていたが、一度もその姿を見る事は無かった。
……まさか篭りっぱなしで何日も出てこない、とか。……ありえないし。
何日も何もしないままでいる訳にもいかなくて、俺は諦めて普段の生活に戻った。
なんで彼にそこまで拘るのか、自分でもわからないまま。



それからどれくらい経っただろう。
あの目を思い出す事もまれになった頃、プロンテラでその姿を見つけることができた。
大通りで露店を立てている訳でもなく、表通りを歩いている訳でもなく。
路地に入りかけの日陰で、あの時のように座り込んで、だるそうに煙草を燻らせている姿を。
その後の事、あまり覚えていない。
覚えてますか? とか。お久しぶりです、とか。
一気に舞い上がった気持ちのまま自己紹介まで終わらせた気はする。
彼はほとんど喋らなくて、ただ俺がまくしたてるのを聞いているだけで。
表情は変わらなかった。
最初から不機嫌そうな顔してたから、変化がわからなかっただけかもしれない。
どうしてこんなに気持ちが高揚しているのか、自分でも不思議で仕方なかった。
おかしいとわかってるのに冷静になれなくて、勢いで室内狩りに誘ったのだ。
まさか、頷いてもらえるとは思わなかった。



せっかく、……そう、自分としては奇跡の再会を果たしたというのに。
きっと呆れられただろう。
自分から声をかけたくせに足手まといにしかなってないなんて。
星入り武器だから当たってるけど、微妙に狙ったところに当てられない。
何よりも俺、槍主体の狩りばっかりだったから、バッシュくらいしか使える攻撃手段がないとか情けない状態だし。
ああでも、アドレナリンラッシュでちょっと体が熱くなる感じが気持ち良いかも……。



こんなんでこの先も一緒に狩りとか、そもそも次に話しかけたとしても相手にしてもらえるだろうか。



気持ちだけは高揚してる。
バーサークポーションを飲んでも、振り上げる腕は重くて。
せめて注意を自分に引き付けておければ良いんだけど、あの人の方が動きが早くてそれも叶わない。
何かに突き動かされるように駆け回って、目に付いたモンスターを集めるだけ集めて。
後はもうほとんど、倒してもらうのを待ってるようなものだ。
ああ、そろそろバーサークポーションが切れるな。
三十分で帰るのは早すぎるかもしれないけど、きっとここで終りだ。
そう思ったとたん、持続時間はまだ残っているのに、狂気が抜けていくような醒めた気持ちと脱力感に襲われた。
群がるマリオネットとダークフレームを相手に、カートを振り回すあの人から視線がぶれる。
それでもライドワードを殴り続けながら、揺れる視界は足元へ、床へと移って。
その瞬間、細い閃光が走った。
「!?」
痛みがきたのは数秒あと。
何の事はない、倒されたダークフレームの、飛び散ったガラスの破片が頬を掠めただけだ。
一直線に走った傷が熱を持つ。
頬に血が伝うのを感じながら顔を上げると、俺に齧りついていたライドワードは、引っぺがされてボコボコにされていた。
バラけた本のページが宙を舞い、ひらひらと床に散る。
それと同時に、体の芯にあった熱が引いていく。
時間だ。
もうおしまい。
俺の顔を見ながらしかめ面をしている人は、二度と一緒に狩りにこようとは思わないだろう。
一歩近づいた彼の視線が、俺の顔の片側に注がれている事にやっと気がつく。
「あ……」
俺は慌てて頬の血をぬぐった。
一度ぬぐっても、真新しい傷からはすぐに血があふれ出す。
回復剤を使うほどじゃない。
事実、痛みはもう引き始めている。
早く止まれ、早く治れ。
これ以上、情けないとこ見られたくない……。
「これくらい、俺ならほっといてもすぐ治るんで……!?」
勢い良く胸倉つかまれて、足がもつれてホワイトスミスの姿が一瞬消える。
短くなっていた距離が一気に失せた。
銀色の毛先が視界の端で揺れて。
頬にかかる吐息。
暖かい湿った物が頬をなでる。
流れ出た血の上を、傷の上を。
いったい何が起こったのか把握しようとするより前に、思考が停止した。
どうにか均衡を保っていた両足が、またもつれそうになる。
離れていく、その空気の流れで、濡れた頬から急速に温度が奪われた。
唖然としている俺を見ている。
銀髪の奥の深い青。
光源のはっきりしないこの場所でさえ、光を失わない青玉。
「たしかに、舐めときゃ治りそうだな」
そう言って、片方の口角だけ上げるようなニヤリ笑いを浮かべる。
一気に血が逆流した。
「そ……そーですねっ」
意地の悪い笑みを浮かべたまま、俺に背を向ける。
なんだかほっとして、気がついたら膝が少し笑ってた。
それがどんな意味でも良い、俺の間抜けさに呆れたのでも良い。
……初めて、笑ってくれた。
少し嬉しくて見つめる背中を、一瞬赤い光が包んだ。
投げ捨てられた小瓶には、赤い液体。
「……え?」
狩りはここで終りだと、俺は思ってた。
俺の声が聞こえたのか、怪訝な顔で振り返る。
「白ポ使い切ったか?」
「え? ……いえ!!」
慌てて荷物袋を探る。
大丈夫、先輩方を拝み倒して無形盾と悪魔盾も借りてきたから、それほど消費してない。
「まだ行けます!」
「そうか」
その声に少し、笑みが含まれていたような気がするのは、錯覚だろうか。
考える暇も無く、バーサークポーションをくわえながら、先を行くその背中を追いかけた。



始終つまらなそうで、不機嫌そうな顔をしていて。
怒ってるんじゃないかとかビクビクしながら清算を済ませてもらう。
でも最後に貰ったのは「次はお前の得意な武器で来い」という言葉だった。
次が、ある。
もうそれだけで、……十分だ。



自分が何に囚われたのかわからない。
なぜ視線がいつも彼を探しているのかわからない。



もう少しでも近づけたら、わかるだろうか。
今はまだ遠すぎて、夕日の中に落ちる彼の影にすら手が届かない。
この距離を縮めるために。
俺は、強くなりたい。

2007.10.3

あとがきっぽいもの

某SNSにてギルメンに1500HITを踏み抜かれ、試しにリクエストを聞いてみたら当時自分の中でも妄想が炸裂していたWSネタだったので大喜びで書いた物(笑)
そもそもの発端は『画像倉庫』の『ロクデナシ鬼畜受け』をご覧ください・・・。
私はわりとシチュエーションが先に思い浮かんで、それを可能にするキャラを作って書き始める方なんですが。今回はキャラ先行という珍しいパターンでした。
ビジュアル先行だと性格とか謎で困りますね・・・。
詳細設定はこれを書いた後に決まったりしているので、今振り返るとどうつじつまを合わせるか悩ましい箇所がちらほらあるんですが;;;
また改めて書く時には、これはパイロット版と言う事で;
あ、名前は決まりました(笑)
いつかちゃんと恋人になれるところまで書いてあげたいのもですが、いつになるかな・・・;

そしてこれも書いておかねば・・・。
思いっきりWS攻めに見えますが奴は受けなんです!!!

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