挿話 『街角の風景』

 プロンテラの一角、綺麗に舗装された道の傍で、冒険者達が思い思いの姿勢で座り込み談笑している。
 よくよく見れば、その一団が全員同じギルドのエンブレムを身に着けている事に気がつくだろう。
 首都においてそれは、珍しい光景ではない。
 人通りがあまり無く、通行の邪魔にもならないような場所。そうした場所をギルド特定の集合地点と決めて、狩りの待ち合わせをしたり、日々語り合っていたりするのだ。いわゆる溜まり場と呼ばれている寄り集まり所だ。
 ギルドハウスと呼ばれる家屋を所持しているギルドもあるが、ほとんどのギルドはそういった物は持たず、自分たちの溜まり場を決め、そこに集まる。
 主だった都市にはどこにでも、このような溜まり場があった。
 人の多いプロンテラではなおの事、冒険者達が寄り集まっている姿は日常の光景となっている。
 くだんの冒険者達も、先日初めて足を踏み入れたダンジョンの話や、近頃の相場の話などから。はては新しく出来た店の看板娘が可愛いとか、どこそこで食べた料理が絶品だったとか。取りとめも無く話しているのだった。
 ふと、若い騎士が顔を上げる。その視線の先に、黒い服に白い不思議な形の装甲を身に着けた男が歩み寄ってくる。
 褪せた様な赤いマフラーをなびかせる、アサシンクロスの姿も、最近では珍しいものでも無くなった。
「やあ」
 穏やかな笑みを浮かべながら、アサシンクロスが冒険者達に声をかける。
 座って語らっていた者達が、久しぶり、と言ったような事を返す。
 良く見れば、アサシンクロスもここの皆と同じエンブレムを着けていた。
「経験上げようったって引きこもりすぎだよ。ダンジョンが家になってるんじゃない?」
 先刻の騎士が気安く言うのに、アサインクロスは笑いながら頷いた。
 それから、ふと気が付いたように。
「ところで、雨は降ったかい?」
「しばらく振って無いすねー」
 騎士とは別の、やはり座って話していたスナイパーが答えた。
 アサシンクロスは、そうかと頷いて空を見上げる。
 薄い雲が一筋流れるだけの、抜けるような青空がそこにはあった。
「埃っぽくなってきたから、そろそろ一雨欲しいところだけど」
 つぶやくような言葉に、他の面々も空を見上げる。
 雨雲の気配一つ無い晴天だった。
「それじゃあね」
 空を見上げるギルド員達に、そう言ってアサシンクロスは歩き出した。
「また狩り? あんまり頑張りすぎないようにねー」
 スナイパーの隣に座っていたハンターの女性が、歩き去るのに気が付いて声をかけた。
 それに立ち止まり、わずかに振り返る。
「ん、今日は、散歩」
 にこりと笑いながらアサシンクロスの言った言葉に、見送る冒険者達は笑い出した。
 太陽浴びて来いだの、光合成してらーだの、賑やかに送り出してくれる仲間達に軽く手を振って、街の外へ繋がる門へ向かってのんびり歩き出す。
 彼らのギルド名を『ミッドガッツ散歩同好会』と言う。
 その名の通り、今日は一日ぶらぶらと歩き回るつもりのようだった。

2009.7.28

あとがき


レイン一人称だとフォローしきれない部分があるため、苦肉の策として挿話をいう形を取ることにしました(´・ω・`)
「こういう設定」というのを、レインに説明させるのに限界がありまして;
現段階だと意味わからないと思いますが、適当にスルーしててください・・・。

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