フェイヨンにて

今日は久しぶりにフェイヨンの地下に来ている。
ここら辺はジェイドのヒールで倒せる敵も多いから、どちらか片方が退屈する事も無い。グラストヘイムほど色々な意味で必死になる必要もないから、ちょっと遊びたいくらいなら丁度良い。
「月夜花にでも会いに行くかぁ」
「俺が死ぬ」
地下4階に着いたとたん更に下を目指そうとする相方の黒い法衣の端を引っつかんで、とりあえず土下座する勢いでなだめ倒して4階で手を打ってもらう。
フェイヨンの地下4階なんていったら、こいつがまだアコライトの時代にパーティーで篭っていたような場所だ。
プリーストになってから久しく足を踏み入れていなかった場所で、今更狩りなどしたくないんだろう。
頑張っている一次職の集団とすれ違うと、あいつの気持ちもわかる。
組んでいる俺がバリバリの戦闘BSときては、ようやくここに足を踏み入れる事が出来るようになった連中の狩場を、ただの酔狂で荒らすのと変わらない。
ソヒーからマフラーを引き剥がすために一人で頑張っている奴らとも訳が違う。
自分が苦労した時期を過ごしていた場所だけに、見ず知らずの後輩達に冷たい視線を受ける真似はしたくないんだろう。
と言う訳で、打開策として半製造BSを装う事にする。
ここまで鍛えた腕力は誤魔化しようが無いので、装備は未精錬メイス!
しかも属性なんざ付いているはずもない、まっさらな店売りの新品。ついさっき買ってきたばかりだ。
もちろん防具も全部外す。せめて被り物の一つも身に着けていないと不振かとは思ったが、腕力よりも体力の方が高いのだ。ちょっとでも製造屋の振りをしようと思ったら、これくらいやらないと駄目だろう。
これで傍目からは製造鍛冶屋に付き添う聖職者の図に見えるはずだ。
よく観察したらバリバリに不振だが、気にするな。
「なにをそこまで…」
呆れた相方の声を背中に聞きながら、とりあえずムナックを殴る。そして反撃を食らいまくる。
久しぶりに手にしたメイスは、日ごろ愛用している斧に比べて軽いこと軽いこと。
そして弱い。流石だ、未精錬メイス。
俺の意図を理解しているジェイドからは支援魔法など一切飛んでこない。
傷と出血が洒落にならなくなってきたころにヒールで癒してくれるくらいだ。それもかなり威力を落としてあるから、いつもの半分も回復しない。
ボンゴンとムナックに群がられると捌けるはずも無いので、そんな時はさすがにヒールで援護してくれるが。
マグニフィカートだけはどうしても俺も被ってしまうから、それはまぁ、仕方が無い。
ジェイドは趣味の辻支援と寄って来るムナやらボンやらに癒しを施して、結構楽しそうにやっている。
辻支援しまくっているのに俺には支援しないプリーストはどう考えてもおかしいのだが。
ここに来ている連中はそれなりに自分たちの事に必死のようなので、気が付いてくれない事を祈ろう。
少し離れたところで湧き始めた化け物に群がられている剣士に、ヒール、キリエエレイソン、ブレッシング、速度増加、イムポシティオマヌス、更にヒールとキリエの繰り返し。と、立て続けにジェイドが辻支援を叩き込んでいた。
殲滅し終わった剣士が近付いてきて、熱烈にジェイドに感謝していった。
……………投げキスなんぞ投げるな、小僧。それは俺のだ。
お前も嬉しそうに手ぇ振って見送るなよ、ジェイド……。
ちょっとムカついたので通りかかったソヒーを殴ってみる。
弱い、弱いぞ俺!
「なんか、これは。………あれだな」
「あん?」
「懐かしい気持ちがよみがえってきて、楽しくなってくるな」
「それは、……ある意味マゾと言わないか?」
攻撃は余すところ無く全て食らって、死にかける度に自己ヒールかけて延々エギラとガチンコしていたお前に言われたくない…。
千歩くらい譲って、お前に惚れてる時点で精神的にマゾなのは認めても良いが…。それもどうなんだか。
ソヒーが倒れるまでの攻撃回数を数えてみる。恐ろしく時間がかかったが。風属性チェインで今メイスをふるって出している破壊力と、同じくらいの威力しか出せなかった頃が俺にもあった。
あの頃は若かったなぁ、と、つい思い返してしまうのは。歳なのかねぇ。
「お、棒切れ発見」
ジェイドが嬉々として天下大将軍にホーリーライトを撃ち込んでいる。
崩れ落ちた後には木屑が一つ。
「ち、流石は棒切れ。シケてやがる」
そいつ、一応は立派な名前を持ってる奴なんですがね…。
それでもきちんと拾っているあたりは律儀なものだ。
というか、俺以上に楽しんでないか?
普段行っているような場所だと、俺の面倒見るのに手一杯で辻る余裕は無いからなぁ。思う存分、辻支援を満喫しているらしい。
お互い死ぬ心配も危なくなる心配もそれほど無い。
ここまで防御力やら攻撃力やら落としてまで、……一応、相方への気遣いだから必要無いとか言うな。
今更こんな場所に誘ったのにはそれなりに目的がある訳なんだが。
まぁ、あれだ。
ボン帽とかムナ帽が欲しくなったりしたわけだよ。
ムナ帽を被せたい相手は、どう考えてもボン帽の方が似合いそうな男だが…。
いや、一番似合うのは多分、悪魔のヘアバンド……。
買う方が早いのはわかっている。ただ、どうにもタイミングが悪いのか。探している時には見つからないのだ。
俺もジェイドもこの場所には、だいぶ昔に世話になった。
かなり長期間こもっていても出なかったものが、ちょっと思い立ったからって拾えるとは思えないが。
良いじゃないか。少しくらい恋人気分だって味わいたいんだ。
こんな目的で狩りに来たって良いだろう。



一方的に想っていた頃の苦しさは無くて、ただ、そこにいてくれる事で感じる幸福感だけがある。
人間、思いを遂げると落ちてゆくものだ。
やたらにストイックだった俺よ、さようなら。
ムナ帽とボン帽の野望は果たせないまま、それでも未練たらしく歩いて地上に帰ろうとしている自分が情けない。
まぁ、目的がそれなら最初から3階で事足りる用事だったんだが。流石に飽きがきそうだったんもんで…。
3階から2階へ戻る途中、壊れた家と池のある場所がある。
なんで地下にこんなもんが、と思うが。
その池の真ん中辺りに肉が一つ落ちていた。
この池にはヒドラが山と湧くので、誰かが倒した後に拾わずに去ったのだろう。
今は一掃された後らしく水面は静かで落ち着いていた。
「食い物を粗末にするとは罰当たりめ」
骨やら死霊やらが回りにいない事を確認して、カートを引いたまま水の中にざぶざぶ入った。
「お前、肉好きだなー」
「主食だからな」
「ちゃんと食物繊維も取れよー」
「ニンジンもカボチャも、下すほど食ったからもういらん」
壊れた家の手前でジェイドは待っているつもりのようだ。
水中に落ちている肉を拾い上げた瞬間、俺の周りで一気にヒドラが8体ほど湧いた。
「どわぁ!?」
「ぬわ!?」
二人同時に驚いたが、慣れたもので。すぐさま効果が切れたままだったマグニフィカートの詠唱が聞こえてくる。
ヒドラごときの攻撃はただチクチクする程度だからどうって事は無いんだが。
ただ、俺の右手には未精錬メイス。
数に対して果てしなくまだるっこしい。
風斧がカートの中にあったはずだが、振り回して使っていた事もあってどこにあるんだかわかりゃしない。
しかも倒す端から更に湧いてくるし…。
ウィザードが範囲魔法で掃討した後だったんだろうか。
次の得物に狙いを定めると、座って休んでいるジェイドが目に入った。
「放置かよ!?」
「がんばれー」
にっこり笑って可愛らしく手を振られたので返す言葉も無い。
そりゃ確かに痛かねぇよ。マグニかかってりゃ勝手に全回復するよ。
ただ、これ全部片付けないと岸にも簡単にたどり着けないじゃないか。俺には機敏さなんか無いぞ。
今日一日封印していたスキルを総出で繰り出して一気に潰して行く。
ヒドラ相手にこんなに必死になるなんて、何年ぶりだよ…。
どうにかこうにか叩き終わって、とりあえず落ちている物を拾い集めてジェイドの所へ戻る。
ずぶ濡れだしべと液まみれだし、散々だ。
夕飯の肉4個は確保できたが、良いんだか悪いんだか。
戻ってきた俺をジェイドが立ち上がって迎えてくれる。
一歩近付くと、ひたりと、シャツから覗く俺の胸元に手を当てた。何を考えているのかわからない顔で。
瞬間、心臓が跳ねる。
「水も滴る良い男という言葉があるが」
そのまま指先で、チョーカーをいじる。ぞくりとしたものが身体を這い上がって…。
「ぬらぬらしていると何か違うな」
「……………放っておいてくれ」
誘ってるのかと思ったろうが。
そのぬらぬらしているのが面白いのか、のの字書いて遊んだりしている。
「くすぐったいって」
手首を掴んで剥がすと、片眉を上げる。が、抗議は無い。
「べと液まみれになるまでてこずったのは誰のおかげだ」
「いや、楽しそうに戯れているのを見ていたら…」
「………軟体動物と戯れる趣味は無いよ。…て、何だ?」
何か言いかけていた風なことに気付く。
胸元に落ちていた視線が、少ししかない身長差で俺を見上げる。
「お前も突っ込まれたらアンアン言うのかと思って」
「想像するな!!」
「あまり近付くなよ、ぬらぬらが移りそうじゃないか」
「酷ぇ!」
思わず身を乗り出したら、本当に一歩下がりやがった。
「乾いてカピカピになる前に、洗った方が良いんじゃないのかー」
言いながら視線は俺の背後、さっきまでヒドラと戯れていた池を見ているらしい。
つられるように振り返ると、一歩遅れて湧いたらしいヒドラが一匹、元気にウネウネしていた。
「……………」
「ついでに言うと、生臭いぞ。お前」
泣いても良いでしょうか?



洗濯するためにヒドラを倒しても、またすぐに湧かれそうだったので急いで地上を目指すことにした。
2階に上がってすぐの所に池があったが。なんか知らんがモンスターが大移動したらしく、以前はタヌキやモグラがいるくらいでのんびりしていた2階が今ではちょっと気が抜けない。
カートにしまっていたいつもの装備を身につけると、本気モードで突き進んだ。
流石に普段の支援魔法ももらえたので、ほとんど立ち止まる事も無い。
妙に敵が溜まりこんでいる場所もなく、すんなりと地上にたどり着いた。
最後にちょっとだけ期待していたんだが、帽子は手に入らなかった。
運ねぇなぁ…。
体中べとべとしたままで気持ち悪かったが、フェイヨンの街じゃなく明後日の方向を目指して急ぐ。宿屋に嫌な顔をされそうなんで、そこらへんの池で水浴びしてやる。
弓手ギルドの脇に、少し大きな池がある。弓手ギルドから向かって対岸あたりに行くと、幸い人もいない。
池の端にカートを置いて、しょってた荷物を降ろすとそのまま池に入った。
「一緒に水浴びするか?」
「俺はぬらぬらしてないから良いの」
まがりなりにも恋人のつれない言葉に溜息ついて、池の端にカートを置いて少し深い所まで進んだ。
ぬるぬるしっぱなしなのは、正直自分でも気持ち悪かった。
シャツを脱いで水の中に落とすと、適当に水浴びする。ジーンズにヒドラの体液っぽいのが張り付いているので強引にこそぎ落とす。
染みになって残ったら嫌すぎる。
ついでだから頭も洗って。最後に洗ったシャツを絞りながら戻ると、俺のカートに腰掛けながら待っていたジェイドが立ち上がる。
「ズボンは脱いで洗わなくて良いのか?」
「お前は濡れたジーンズをはく事がどれくらい難しいか知ってるか?」
うぬ、と唸って黙り込む。考えているのかもしれない。
いや、それほど悩む事でも無いだろう。
濡れたシャツをまた着る気にもなれなかったので、広げてカートの上に乗せた。ジーンズはまぁ、ほっときゃそのうち乾くだろう。
ブーツに溜まった水を流し捨ててはきなおす。歩くたびに気持ち悪いが、こればっかりは仕方が無い。
ジェイドが俺の目の前に来て、肩をぺたぺたと触る。
「もうぬらぬらしてないな」
「近付いてもOK?」
「生臭くもないしな」
了解を貰ったことにして、笑みを形作る唇を自分のそれで塞いだ。
濡れ鼠のままで抱きしめるのがためらわれて、頬に手を添えただけで。
「冷て…」
俺の冷えた手に、ジェイドが小さく不平を漏らす。
「春にもまだ早いぐらいだからな、水がすげぇ冷たかった」
「風邪引くなよ」
「………じゃ、暖めてくれるか?」
すぐ近くのジェイドの顔が妙な表情をした。
誘ったのはそっちだと思うんだがなぁ。
もう一度口付けると、特に抵抗も無い。法衣の留めを外して背中に直に手を回すと、冷たいのかそれ以外の理由でか、身体がぴくりと震えた。
絡め取った舌先から、熱が伝わる。それだけで全身が熱くなるのは、俺だけじゃない。
ジェイドの熱い吐息を頬に感じながら、耳元から首筋に唇を滑らせれば、途端に身を捩って俺を引き剥がそうとした。
「ちょ……待て、……野外っ、ん」
「先に誘ったのはそっちだろ?」
「してな……あっ」
無自覚だったのかよ。
背中を撫で上げながら胸を擽ると、赤みを増す肌が色っぽい。
息が上がってきて、視線を下に向ければそれなりに反応が返ってきている事がわかる。
摘むようにしながら胸の突起を捏ねると身体が跳ねる。ジェイドの手は押し返すというよりも、もう俺にしがみ付くように肩に置かれ。感じるたびに、その手が肩に食い込んだ。
「や、止め……、こ…こじゃ」
目を潤ませながら俺を睨みつけて、そう言うとあたりへ視線を送った。
池の端で、確かに見晴らしが良い。
弓手ギルドとは池を挟んでいるとはいえ、いつ人が通るとも限らない。転職するためにノービスが通りかかったら、目の毒も良いところだろう。
見せびらかすのも何なんで、腰を抱きながら少しその場を離れた木立の中に移動した。
木漏れ日の中に、頬を染めて白い肌を晒すプリースト。
たまにはこんなのも良いんじゃないかと、当人がなんと言うかは知らないが俺はそう思った。



「あ、……はっ…ぁ」
木に背中を預け、法衣以外は剥ぎ取られたジェイドが甘い声を上げる。
切なく寄せられた眉と、赤く染まった目元が明るい中で俺に至福を与えてくれる。
そう、日差しはまだ高くて。隠しようも無く総てが曝け出される。その所為かどうか、俺の肩に顔を押し付けて。ただ息だけが熱く吹きかかり、歯を食いしばっているんだろう。漏れてくる声が、いつもよりも低く耳に響く。
もっとその声を高く上げさせたくなるのは、別に、意地悪じゃないよな。
晒されたあいつの熱をきつく扱き上げると、ぎしりと歯軋りの音が聞こえた。
「やぁ…め……っ」
「ここで止めたら、これはどうするんだよ?」
抱き合うようにしながらさすっていたそこは、先走りの汁でぬるぬると滑る。きり、とまた、歯軋りの音がした。
「責任、取れ。……馬鹿」
勿論そのつもりだった俺は、返事のかわりに頬に当たるジェイドの耳に頬擦りした。それだけでもびくんと跳ねる身体が可愛い。
跡を残すと怒られる首筋は、唇と舌先の愛撫で木の葉の合間から漏れる小さな光を所々で反射していた。
名残惜しい気持ちで一舐めしてから、ジェイドの腕をすり抜けて腰を屈める。すぐに何をしようとしているのか察したジェイドの手が、俺の頭を押さえつけようとするのよりも少し早く、その熱を口に含んだ。
「あっあ!」
びくんと震えて逃げようとした腰は、背後の木に妨げられて動けずに。ただ膝を震わせている。
「ん、………ゃ」
頭上から降る上ずった声に満足しながら、足の間にジェイドの露で濡れていた手を差し入れて内股を撫で上げた。
震える足の間は、溢れて伝った液で濡れて。ジェイドの手が俺の髪を乱した。
「あっはっ、んん!」
付け根から舐め上げて柔らかな皮膚の裏、後孔まで続く線を指先で辿れば、閉じようとする足が俺の手を挟む。
そんな事されても揉むだけなんだが…。
「あ…ぁ、……や」
見上げれば雫を溢れさせる先端の向こうにジェイドの仰け反った白い喉が震えている。良い眺めだ。
足に挟まれた手をじりじりと進ませて、まだきつく窄まった箇所に指先を押し付ける。
「や…め、そっち……まで」
最後までやるつもりは無かったのかもしれない。が、ここまで来て俺だって止められるわけが無い。
もう一度口に含んできつく吸い上げると、高い声が上がる。その隙に一気に指を突き入れた。
「ひぁ!あぁんっ」
中は相変わらずねっとりと熱くて、まだきついそこは内壁が吸い付くどころか指先を締め上げてきた。
一度入れてしまえばこっちのもので、ゆっくりと指を動かせば少しずつ緩んでくる。
「ぁ……、ウォ…ル。駄…目だ、………やめ」
涙交じりの声が、限界が近いと訴えているようで。入れられる限り指を押し込んで、ジェイドの感じる箇所を探ると身体が跳ねた。
舌で絡め取った熱は小刻みに震えて、ひくつく襞がまだ一本きりしか入っていない指を締め付ける。
両方を同じように攻めると、絶え間なく断続的に嬌声が上がる。木々の間に吸い込まれて消えて行く声は、抑えようとしているのか切なくてどこか頼りない。
「や……、出…る。あっ、も。やっあぁ!」
指が一際きつく締め付けられて、髪を掴まれながら俺の口の中に熱く苦い物が流れ込んだ。
吸い上げるように口を離し、弛緩した身体から指を引き抜くと。ジェイドは木に凭れかかりながらしゃがみこむ。
膝を折った足を広げた格好で、その中心では精を放ったばかりの物が、まだ微かに立ち上がったまま震えていた。
快楽の熱の浮かんだ顔を眺めながら、きつくなっているジーンズの前を開けようとして。湿ったジーンズに手こずらされた。
焦る俺の手元を見て、ジェイドの目に期待の色が浮かんだように見えたのは、気のせいじゃないと思いたい。
漸く戒めを解かれたそれが、待ち切れなかったように飛び出してくるのが我ながら何となく情けない。
立ち上がって目の前に持って行くと、やり場が無さそうにその視線が泳ぐ。
「ジェイド…」
言って頭を撫でて、ようやく唇を付けてくれた。
それだけで、溜息が出るほどの充足感に包まれる。
やっと口でもしてくれるようになって。それも夜の暗い中の、追い詰めに追い詰めて我を忘れさせて、どさくさ紛れみたいな方法ばかりだったから。こんな明るい中で躊躇いながらでも、舌を使ってくれるのはむしろ感動だ。
初めての時から積極的ではあったが、羞恥心はどうしても拭えないらしくて。こんな事や見られる事は、今でも嫌がる。
木陰が光を遮っていても、姿を隠せるほど暗い訳じゃないこの場所で。じっくりと見ていられるのは、本当にもう、至福。
「……待ちきれなかったら、自分で慣らすか?」
途端、歯を立てられた。
呻き声を上げる俺を、可笑しそうな目が見上げてきた。
こればっかりはまだ抵抗があるらしく、その手を導いた事はあったが抵抗された。
ジェイドは自分が歯を立てた所を、優しく舌先で舐める。
元来が負けず嫌いの男は、こんな事でもその性格を発揮して。かなりの勢いで上達していた。
「ジェイ……」
自分の声が上ずっているのがわかる。その声に満足したのか、ジェイドの舌がまた積極的に俺を這い回って追い上げ始めた。
見下ろせば、微かに眉根を寄せて口一杯に俺を含んでいる顔。大きさは普通だと思うが、それでも総てを口に収めるには大きすぎる。それを懸命に飲み込もうとする、顔。
「ジェイド、……もう」
手と唇と舌は、止めようとせずに。
止めてくれないのならこのままでも良いか、と。深く飲み込まれたその時に、喉の奥に自分を解き放った。
苦しそうな顔が懸命に飲み下しているのがわかって、愛しさに髪を撫でる。
ゆっくり引き抜くと、唇から白っぽい糸が伝ってすぐに切れた。
「………まず」
苦々しそうに言う、実際苦かったんだろうが。その顔は上気して、顰めた眉すら蠱惑的に見える。
しゃがんで口付けようとすると、躊躇うようにその唇が逃げた。お互い様だと思うんだが。
捕まえて唇を合わせる、閉じて開かないそこを舌先で抉じ開けて。広がる苦味は、このさいどうでも良い。
また熱を持ち始めている肌が、掌に心地良い。胸の飾りは硬いままで、指が触れるたびに小刻みに触れている身体が震える。
「ん……ぁ、止め、………もう、い」
触れる唇がそんな言葉を吐くが、目尻を赤く染めて涙で潤ませて。
俺がまた元気になったって、それは仕方ない。
抱き寄せながら立ち上がると、お互いの物が触れ合って。お互いが、また熱くなっている事を知る。
それはジェイドも同じようで、抱きついて顔を見せようとしない。
背中に回していた手を下ろして、また指を押し込んでも。抵抗もせずにただ身体を振るわせた。
「ん……、ん」
一本きりの指先がもどかしいのか、頬擦りしながら身体を擦りつけてくる。
熱くて硬くなったお互いの物が、そのたびに擦りあって。そんな事されたら、俺だってもたない。
「ジェイド」
「あっ」
指を抜くと上がる残念そうな声、続いて歯噛みするような微かな音。
抜かれたのが腹立たしいのか、自分で上げた声が苦々しいのか。………多分、後者。
頬を染めている所をくるりと反転させると、バランスを崩したのか木にもたれかかるような姿勢になった。
「な、…ちょ、……あっ」
法衣の切れ目から手を差し込んで足を撫で上げると、びくりと振るえて木にしがみついた。
足の間は相変わらず熱くて、柔らかく嚢を揉みしだくと膝が震えて。
「ちょ、……や…ぁ」
法衣の裾を捲り上げようとすると、手が伸びてきてそれを阻んだ。
「服が汚れるぞ?」
「……く」
本気で悔しそうな有様が可愛らしい。
明るい中に晒されるのが恥ずかしいんだろうと、わかってはいたが。そんな姿だって、見てみたいじゃないか。
突き出すような格好の尻を剥き出しにさせて、軽く撫でると歯を食いしばる音が聞こえた。
思わず苦笑いして、傍らのカートの中身のてっぺんに、だらりと入っている物の存在を思い出した。
「まぁ、せっかくだし…」
「なに?……ぃ、あ!」
「散々、ぬらぬらしてるとか、生臭いとか言ってくれた礼」
「何入れ……あぁ!」
2本の指と一緒に押し込んだ物が、ぐちゅりと粘着質な音を発てる。
妙に粘着性のあるらしいそれは、いつも以上に内壁を指に吸い付かせて。
「………結構いいかも。……べとべとする液体」
「!?そんな物!!……あっやぁ!」
「ついでに触手も挿れてみようか」
「馬鹿!あぁっ…や、止め…ぁ」
薄緑色の液体が擦られて泡立つほど出し入れすれば、震えるだけじゃなくなった腰はゆらゆらと揺れて。物欲しそうな動きに劣情が刺激される。
指を広げてもう少し液体を注ぎ込む。ぬるぬると良く滑る指が、奥深くまでその液体を擦りこませて。
「中だけべと液まみれ」
「馬鹿っあ……や、だぁ」
ぐちぐちと指を動かして背後から顔を近づけると、涙に濡れた目が肩越しに睨んできた。
何時もの事ではあるんだが。
上気した顔だとか、ほのかに紅く染まった目尻や耳元だとか、切なく寄せられた眉だとか。涙で濡れる、悦楽の浮かんだ瞳だとか。
見るたびに、どくんと心臓が跳ねる。
吸い付くそこから指を引き抜いて、自身を宛がったそこはひくつきながら俺に食いつく。
「ん…く、……はぁ」
挿れられる事に慣れた身体は、俺を受け入れてまるで安心したように溜息を吐く。
「ジェイド、…今日はなんか、すごい吸い付く」
「あんなの…使う、から…ぁあ!」
それだけなのかどうか、俺をぴったりと捕らえて放さない内壁は、収縮と弛緩を繰り返して俺に快楽を与えてくれる。
「あっ…は、……あぁん」
奥深くまで馴染ませた液体が動きを容易にしてくれ、繋がっている腰を打ち付けるたび周辺に糸が引く。
後ろから抱えるように胸元をまさぐって、胸の飾りを摘み上げると悲鳴に似た甘い声が響く。
しつこい愛撫に繋がる腰が揺れて、自分から感じる場所へ誘うように腰を押し付けてくる。
熱と、湿って柔らかい襞が、あんまり締め付けて吸い付くから。流石に長く持ちそうに無い。と、思っていると。ジェイドの方が先に根を上げた。
「や…もう、やぁ、あっ……終わら…せて…ぇ」
胸元から手を下ろすと、ジェイドのそれは蜜を溢れさせて。足の間までしっとりと濡らしているようだった。
「あっあぁ!」
触れた指先に熱を擦りつけるように腰を振る。
ここまで来るともう、快楽を追う事に精一杯で。日ごろの自尊心の欠片も無くなるらしい。
声を張り上げて、自分から腰を揺らす。
これが嬉しくて、ついつい意地悪になるのも、わかって欲しいところなんだけど。
「あっん、……あっはぁ!」
前と後ろから聞こえる濡れた音と、ジェイドの甘い声。
自然と手も腰も、動きを早めて。俺も熱に侵されて、物が考えられない。
こんな時は、何も考えたくない。
「あっ、出…ちゃ、あっ…あ、あぁ!」
木の幹に爪を立てるジェイドに、総てを叩きつけて。
草の匂いと日差しのおかげが。こんな汗なのに、なんだか少し爽やかな気がした。



真っ赤になったジェイドに、八つ当たり気味にボコボコに殴られたが。
ちょっと珍しい状況だったんで満足。
ただ何時もより良かった具合が、使った物のせいなのか、場所のせいなのか疑問だったんで。
夜になってもう一度べとべとする液体で試してみる事にした。
日に二度もするな、とか言って抵抗はされたが。
どうすればそれも無くなるかは、とっくに知っているんで。こう言っちゃなんだが、ちょろい。
僅かな月明かりにほんのりと浮かび上がる白い肢体も垂涎物で。
屋内の寝台の上で、躊躇う事も無く開かれる身体が艶かしくて。
終わったら案の定、殴られて寝台から落とされたが。
結論としては、野外だったんでジェイドも緊張していたのだな、と。
潤滑剤として使うには、なかなか良い物だって事もわかったが。
立て続けにこれなんで、寝台の上で穏やかに寝息を立て始めた男はしばらく許してくれないかもしれないが。
二つも新しい発見があったんで、それでよしとしよう。
床は固いし冷たいが。
余韻の残っている身体を冷ますには、丁度良いかもしれないな。
とか。
強がりを心の中で言って。
寂しくマントに包まりながら寝た。

2004.2.25

あとがきっぽいもの

尻に敷いてやろうと思っていたのですが。どうなんだろう?
とにかくあれです。
  コ ン ロ ン が 憎 い
本当はFD2Fで事に及ぶはずだったのに。あんなにアチャスケやソルスケに湧かれたんじゃ出来ません;
予定変更したおかげで、まぁ、美味しいシチュエーションにはなったんですが・・・・・。
でもやろうと思っていた体位が使えなかった・・・・・_| ̄|○ (そんな物を残念がるな
コンロンが来てから、2Fまでは行ったんですが、3Fや4Fは今現在どうなっているんでしょうねぇ。以前は行ったんですが、ちょっとソロで向かうにはまだ無理っぽいので、検証してません;
フェイヨンも思ったほど街の中に木立が無かったし;(あぁぁぁぁ;;;;
まぁ、画面上で一本しか木が立っていなかったとしても、本当はきっとたくさん生えてるんですよ!
立地条件調べるために使ったキャラがPC3マーチャントだった上に露店途中でカート引いてたもんだから鬱陶しかったのなんの;
まぁ、ようやく念願のこの二人でラブラブなエロが書けたので満足ですw
実は2作目の前に書き始めて、今まで放置していたのは内緒;

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